実践ガイド

Skill・SubAgent・Agent TeamでAIエージェントを拡張する入門2026

Skill(SKILL.md)・SubAgent・Agent Teamの違いと使い分けを実務視点で解説。AIエージェントに知識と手順を追加する方法、専門タスクの委任、並列実行パターン、カスタムSubAgentの定義、非エンジニアの活用例までまとめます。

AI Agent CampAI Agent Camp 編集部··8 分で読了

「AIエージェントに毎回同じ説明を繰り返している」「大きなタスクを任せるとコンテキストが汚れて精度が落ちる」——エージェントを使い込み始めた人ほど、この壁にぶつかります。

この記事では、AIエージェントを拡張する3つの仕組み——Skill(知識・手順の追加)・SubAgent(専門タスクの委任)・Agent Team(並列実行)——を、概念から実務での使い分けまで一気通貫で解説します。内容は、当スクールが法人研修・オンラインコースで実際に使っている教材(Foundation・エージェント開発モジュール)をベースにしています。

AIエージェントそのものの基礎は 生成AIとは?法人の業務自動化ガイド、指示設計の基本は プロンプトエンジニアリング実践入門 を先に読むと理解がスムーズです。

この記事でわかること

  1. Skill(スキル)とは何か — AIに「業務マニュアル」を渡す仕組み
  2. SKILL.md の構成要素とスコープ(プロジェクト / ユーザー)
  3. SubAgent(サブエージェント)とは — 専門タスクの委任とコンテキスト分離
  4. カスタムSubAgentの定義方法(モデル・ツール制限・メモリ)
  5. Agent Team — 複数SubAgentの並列・順次パターン
  6. 3つの使い分けガイドと「Skill付きSubAgent」最強パターン
  7. SKILL.md を書くときのベストプラクティスと非エンジニアの活用例

Skill(スキル)とは — AIに業務マニュアルを渡す

Skill(スキル)とは、AIエージェントに対して特定のドメイン知識や実行手順を定義したカスタム指示書です。Claude Code なら .claude/skills/、Cursor なら .cursor/skills/ ディレクトリに SKILL.md ファイルとして配置します。

イメージは「新入社員に業務マニュアルを渡す」ことです。マニュアルには「いつ使うか」「どんな手順で進めるか」「注意点は何か」が書いてあります。社員自身の能力(モデル)は変わりませんが、参照できる知識と手順が増えることで、業務の品質と一貫性が飛躍的に向上します。

SkillはAIエージェントに業務マニュアルのような知識・手順を追加する仕組みであることを示す概念図

Skillの最大の利点は、AIが自分で情報を探す必要がなくなることです。必要な知識と手順が事前に整理されているため、毎回同じ品質で一貫した結果を出せるようになります。

SKILL.md の構成要素

構成要素内容
名前(Name)スキルの識別名。ディレクトリ名と一致させるのが一般的banner-creator、data-analyst
トリガー条件どんなリクエストでこのスキルを発動するかの説明文「バナーを作って」「データを分析して」
詳細手順実行すべき具体的な手順・パラメータ・注意事項APIの呼び出し方、出力形式の指定

ディレクトリ構成はシンプルで、スキルごとにフォルダを切って SKILL.md を置くだけです。

.claude/skills/
├── banner-creator/
│   └── SKILL.md     # バナー生成の手順・パラメータ
├── data-analyst/
│   └── SKILL.md     # データ分析のワークフロー
└── seo-audit/
    └── SKILL.md     # SEO監査の手順

Skillのスコープ — プロジェクトとユーザー

観点プロジェクトレベルユーザーレベル
配置場所リポジトリの .claude/skills/ホームの ~/.claude/skills/
共有範囲チーム全員が共有個人専用
管理Gitでバージョン管理可能すべてのプロジェクトで利用可能
用途チーム共通の業務手順個人の作業スタイル・ツール

「チームの請求書作成手順」のような共通業務はプロジェクトレベルに、「自分の文章スタイル」のような個人設定はユーザーレベルに置くのが基本です。

SubAgent(サブエージェント)とは — 専門タスクの委任

SubAgent(サブエージェント)とは、メインエージェントから委任された専門タスクを、独自のコンテキストウィンドウ(AIが一度に処理できる情報量の枠)とカスタムシステムプロンプトで実行する子エージェントです。

イメージは「専門家チームに仕事を振るプロジェクトマネージャー」です。調査はリサーチャーに、コードレビューはレビュアーに、デザインはデザイナーに委任する。各専門家は自分専用の作業スペースを持ち、独立して作業した結果だけをマネージャーに報告します。

Skill・SubAgent・Agent Teamの関係を示す全体図

SubAgentのメリット

  1. コンテキスト分離 — 調査の詳細ログはSubAgent側に閉じ、メインには要約だけが返るため、メインの会話が汚れない
  2. シンプルなコンテキストで実行 — 余計な履歴を持たないため精度が安定する
  3. 並列実行が可能 — 複数の調査を同時に走らせて時間を短縮できる
  4. リサーチに最適 — 大量のファイルを読む調査をメインから切り離せる

ビルトインSubAgentの例(Claude Code)

SubAgentモデル用途使えるツール
ExploreHaiku(高速)コード検索・分析読み取り専用
Plan継承(親と同じ)計画のためのリサーチ読み取り専用
General-purpose継承(親と同じ)複雑なマルチステップタスクすべて

実行方式には、メインエージェントが結果を待ってから次に進むフォアグラウンド(順次実行・チェーン向き)と、待たずに次の作業へ進むバックグラウンド(並列実行・Agent Team向き)があります。

カスタムSubAgentの定義

.claude/agents/(Cursor では .cursor/agents/)にMarkdownファイルを置くと、独自のSubAgentを定義できます。YAMLフロントマターで設定を記述します。

# .claude/agents/code-reviewer.md
---
name: code-reviewer
description: コードレビューを行う専門エージェント
model: sonnet              # haiku / sonnet / opus
tools:
  - Read                   # 使えるツールを制限
  - Grep
  - Glob
skills:
  - coding-standards       # 参照するSkill
memory:
  scope: project           # user / project / local
---

## あなたはコードレビューの専門家です
以下の観点でコードをレビューしてください:
1. 可読性とメンテナンス性
2. セキュリティ上の問題

主要フィールドのポイントは次の通りです。

フィールド役割ポイント
model使用モデルの指定haiku=高速・低コスト(検索向き)、sonnet=バランス型、opus=高精度(複雑タスク向き)
tools使えるツールの制限明示的に列挙すると最小権限の原則を実現でき、安全性向上に直結。省略すると全ツールが使える
skills参照するSkillSkillの知識を継承でき、専門性と手順を両立。「Skill付きSubAgent」が最強パターン
memory永続的な学習メモリuser(ユーザー単位)/ project(プロジェクト単位)/ local(ローカル限定)から選択

Agent Team — 複数SubAgentの組み合わせ

Agent Teamとは、複数のSubAgentを並列・順次に組み合わせて、大規模で複雑なタスクを効率的に処理するパターンです。大きなプロジェクトを一人で進める代わりに、複数の専門家が同時並行で作業し、リーダーが結果を統合する——このプロジェクトチームをAIで再現します。

主要パターンは3つあります。

パターン動き方効果
並列リサーチ複数の調査を同時実行し、リーダーが統合・要約大幅な時間短縮
チェーン(順次)前のステップの結果を次に引き継ぐ品質を段階的に向上、ワークフロー自動化
Agent Teamリーダーが指揮に専念し、各メンバーが専門分野で並行作業大規模タスクの分割統治

ただし注意点もあります。

  1. エージェント同士は直接コミュニケーションできない(リーダーが中継する)
  2. 並列実行するほどAPIコストが増加する
  3. タスクに依存関係がある場合は並列化できない
  4. シンプルなタスクにはオーバーエンジニアリングになることもある

実用上は、同時起動は3〜5個程度に収めるのが扱いやすい目安です。

使い分けガイド — どれを選ぶべきか

要件推奨
手順・知識を追加したいSkill
専門タスクを委任したいSubAgent
並列で複数タスクを実行したいAgent Team
コンテキスト消費を節約したいどれも有効
コストを最適化したいSubAgent(Haikuモデル活用)
永続的な学習(記憶)を持たせたいSubAgent(memory設定)

判断基準を一言でまとめると次の通りです。

  1. 何を知っているか」を変えたい → Skill を作成
  2. 誰にやらせるか」を分けたい → SubAgent を起動
  3. チームで同時にやりたい」 → Agent Team で並列実行
  4. 専門知識+独立実行+並列処理を全部ほしい → Skillを持ったSubAgentでAgent Teamを構成するのが最強の組み合わせ

SKILL.md を書くときのベストプラクティス

公式ガイド(Anthropic)の要点を、教材から実務向けに整理します。

  1. 簡潔さを最優先する — コンテキストは共有資産。SKILL.md には「モデルがまだ知らない手順・制約」だけを書く
  2. name / description を具体的に — name は小文字・数字・ハイフンのみで最大64文字。description は三人称で「何をするか」「いつ使うか」をトリガーとなる具体語で書く(発見率に直結)
  3. 本文は目安500行以内 — 長くなる場合は別ファイルに分割し、SKILL.md は目次兼エントリにする。参照リンクは1階層まで
  4. 複数ステップはチェックリスト化 — 検証→修正のループを組み込む。破壊的操作は「計画ファイル→検証→実行」と中間成果物で誤りを早期に止める
  5. デフォルト手順を1つに決める — 選択肢を並べすぎない。ファイルパスは常にスラッシュ(/)区切り
  6. 実行しながら改善する — 代表タスクで評価し、失敗パターンから反復改善する。最初から完璧を目指さない

自由度の設計も重要です。手順が壊れやすい処理は低自由度(固定コマンド・検証付き)に、探索余地が大きい作業は高自由度に設計します。

非エンジニアの活用例

SubAgent・Agent Teamはコーディング専用ではありません。教材で扱っている業務例です。

繰り返す手順はSkillに定義し、大きなタスクはSubAgentに委任し、独立した調査は並列実行で高速化する——この3点を押さえるだけで、エージェント活用の生産性は大きく変わります。複数エージェントの連携設計をさらに深めたい方は 複数AIエージェントの連携設計 も参考にしてください。チームでまとめて習得するなら 法人向けAIエージェント研修 でハンズオン形式の導入が可能です。

よくある質問

Q. SkillとSubAgentはどう違いますか? A. Skillは「AIに知識・手順を追加する指示書(SKILL.md)」で、AIがタスク内容に応じて自律的に参照します。SubAgentは「独自のコンテキストウィンドウで専門タスクを実行する子エージェント」で、メインエージェントから仕事を委任されます。「何を知っているか」を変えたいならSkill、「誰にやらせるか」を分けたいならSubAgentです。両者は排他ではなく、Skillを参照するSubAgentを定義する組み合わせが最も強力です。

Q. SubAgentを使う一番のメリットは何ですか? A. コンテキスト分離です。大量のファイルを読む調査をSubAgentに任せると、詳細な作業ログはSubAgent側に閉じ、メインの会話には要約だけが返ります。メインのコンテキストが汚れないため精度が落ちにくく、さらに複数のSubAgentを並列起動すれば調査時間も短縮できます。検索系のタスクにはHaikuのような高速・低コストモデルを割り当てるとコスト最適化にもなります。

Q. SKILL.md には何を書けばよいですか? A. 名前(name)・トリガー条件(description)・詳細手順の3要素が基本です。本文には「いつ使うか」「手順」「入出力形式」「禁止事項」を箇条書きでまとめます。コツは、モデルがまだ知らない手順・制約だけを書いて簡潔に保つこと(目安500行以内)、descriptionにトリガーとなる具体的なキーワードを含めること、実際のタスクで1回試して足りない指示を追記する改善ループを回すことです。

Q. Agent Teamの並列実行はいくつまで同時に動かせますか? A. 教材では最大10個まで同時起動可能としていますが、実用的なのは3〜5個です。並列数を増やすほどAPIコストが増加し、タスク間に依存関係がある場合はそもそも並列化できません。独立した調査タスク(市場・競合・ユーザー観点の調査など)を3つ程度並列で走らせ、結果をリーダーが統合するのが定番パターンです。

Q. 非エンジニアでもSkillやSubAgentを作れますか? A. 作れます。SKILL.mdもSubAgent定義もMarkdownファイルなので、プログラミングは不要です。「毎回同じ説明をしている」「チェックリストが長い」といった繰り返し業務を1つ選び、エージェント自身に「この手順をSKILL.mdとして整理して」と依頼するのが最短です。生成されたたたき台を実際のタスクで試し、足りない手順を追記していけば、実用的なスキルに育ちます。

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最終確認日: 2026-06-10

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